個人再生の落とし穴
自宅を守ることはできる
住宅ローンの返済は長期に及びます。住宅ローンを組んだ時に想像もできなかった事情のために、返済が難しくなることは、誰の身にも起こり得ることです。
住宅ローンを返すために、生活費をクレジットカードに頼るようになったり、キャッシングを行うようになったら、返済はどんどん厳しくなっていきます。そんな時、まずは生活を見直し、節約したり、パートを増やしたりといった対策を取られるでしょう。 しかし、それで対処できないレベルなら・・・?
自己破産が、頭をよぎるかもしれません。 家は失いますが、ローンも白紙に戻ります。でも、家族の思い出がつまり、長年ローンを払ってきた自宅をどうしても手放したくない方は、個人再生という方法があります。
住宅ローンの大変さは残る
個人再生の最大のポイントは、(自宅がある方は)自宅を残せること。その代わり住宅ローンはそのまま残ります。
前者がメリットであり、後者はデメリット(リスク)です。
個人再生手続が完了したら、以降、「住宅ローン」 + 「その他の借金について大幅カットされた残額」を支払っていくことになります。
これを本当に払っていけるか、個人再生を申立てる段階で検討しておかなければなりません。
- 無職の方は、個人再生の手続は取れません。
早急に、就職する必要があります。 - 借金が増えた原因が残っていれば、その解消が必要です。
たとえば、支出の見直しや、支出コントロールのため家計簿を習慣化すること等です。 - 返済計画では、各種イベントを織り込みます。
たとえば、転勤・転職の予想、子どもの進学、介護リスクなどです。
「手続成功で返済失敗」は最悪
「金は天下の回りもの」と言いますが、お金の流れがある間は、借金が増えつつも何とかまわります。お金の流れがストップすると、たとえ返済額が減っても耐えられないことがあります。
個人再生の申立ては、「現金暮らし」に移行することとセットです。
個人再生の手続は粛々と進みます。それで実際に「自宅を残す」ことになるかどうかは、手続終了後のあなた次第。
「住宅ローン」にしろ、「その他の借金について大幅カットされた残額」にしろ、決まったとおり返せなければ、今度は、破産するしかなくなります。
折角の個人再生手続が、その費用と時間が、無駄になります。
「手続は成功したのに、返済に失敗した」という落とし穴にはまらないよう、予め、弁護士と十分に相談してください。
日ごろの弁護活動の中で、「個人再生について相談・依頼する人」の危機意識の少なさを感じることが多々あります。
個人再生は、申立て前に「強い家計」をセットアップし、手続中(半年前後)にトレーニングして、手続終了後の3~5年間「強い家計」を維持して、「住宅ローン」と「その他の借金について大幅カットされた残額」の返済を続けていく。そこまでをセットで考える必要のある手続です。
大変な努力の継続が必要ですが、それができたときには3~5年の後、より強い「貯蓄のできる家計」に生まれ変わります。