保険会社に頼るリスク

目次

はじめに

交通事故の被害に遭ったとき、加害者側に自動車保険(任意保険)があると、ひとまず安心です。円滑に行くかどうかはともかく、最後には正当な回収ができます。
また、交通事故の被害に遭ったとき、自分が加入する自動車保険の保険会社が、サポートしてくれることがあります。自動車保険の保険金項目の中に、支給されるものがあることも。

ただ、交通事故の被害者は、「保険会社」とは緊張感を持っておくことが大切です。

  • 加害者の保険会社に依存しない
  • 自分の保険会社にも丸投げしない

という2つの側面で、注意が必要です。
「保険会社」には、保険機能を担う共済組合も含みます。

以下に説明します。

加害者の保険は「立場」が違う

なにも保険会社の担当者が「悪人」だと言っているわけではありません。
ただ、「立場」の相違を、わきまえなければならないのです。

担当者は、個人としてではなく、保険会社の一員として、保険会社を代表してあなたに関わってます。
保険会社は「正当な賠償」から逃げるつもりはないでしょう。でも、何が「正当」かについては、あなたとは意見が違います。

親切な担当者にほだされたり、あるいは高圧的な担当者に耐えかねたりして、保険会社の言い値で示談するなんて、もってのほか。
保険会社の対応がストレスになったときは、早い段階でも、弁護士に相談することをお勧めします。
少なくとも示談の前には、必ず弁護士に相談して助言を受けてください。

自分の保険も「感覚」が異なる

自分の保険が使える場合

自分の権利は、自分で守るのが鉄則。自分の加入する保険も、自分で使います。

  • 保険金は、加入したとおりに出ます。
  • 保険金は、請求しなければ出ません。

あなたや家族の加入する自動車保険において、あなたや家族が「被害者」になったときの、あなた方に対する保障としては、次の3つが代表です。
過失があっても割合が小さい場合、被害が大きい場合は「被害者」です。

  1. 車両関係の保障(加入している場合)
  2. ケガへの保障(人身傷害保険など。通常は基本契約にセット)
  3. 弁護士費用の保障(特約を付けている場合)

このうちは、問題が少ないので説明を省きます。

上記(ケガへの保障)は、加害者側の保険会社が治療費支払などの対応をしている場合は、それで不足する部分に限って保険金が出ます。重複して出ることはありません。

上記(弁護士費用特約)は、あなたが積極的に動かない限り、保険金が出ない仕組みです。
保険会社が積極的に利用を促すことはなく、むしろ使わないよう誘導することさえあります。

自分の保険にも注意が必要

あなたの側の保険といえども、およそ保険会社というものは、

  • 日ごろ、加害者の立場で動き、少ない金額で示談をまとめる業務を行っています。
  • 被害者に共感しづらい傾向があり、被害者のサポートにも慣れていません。

あなたの保険会社といえども、所詮は他人。しかも彼らは、被害の「回復」については権限もノウハウもないのです。被害者のあなたの「感覚」とは、随分と異なると思った方がいいです。

あなたは、自分の権利を、自分で守らなければならない。そのためには、「自分で積極的に弁護士費用特約を利用し、積極的な弁護士に弁護を引き受けてもらう」ことが大切です。

【模式的なまとめ】

保険会社は共通して「弁護士の活躍で示談金相場が上がったら困る」との感覚を持ってます。
代理店も同じですが「意識の高い」例外はあります(当事務所の提携先など)。

次の表が、保険会社の典型的な「感覚」です。

自社の契約者 自社契約者の
事故の相手方
加害者になったら
共感する。
加害者側にも
共感できる。
被害者になっても
共感が難しい
被害者側には
共感しない。
 

だから弁護士

加害者の保険は「立場」が違うから、あなたが被害者であっても、あなたに同情はしてくれません。
自分の保険も「感覚」が異なるから、あなたの被害に、心から共感してくれることはないでしょう。

あなたの真の味方は、あなた自身で選び、依頼する弁護士だけです。
交通事故の被害者は、必ず一度は弁護士に相談し、必要なら依頼してください。
費用対効果としても、通常、弁護士費用より、弁護士に依頼するメリットの方が大きいです。

まして、弁護士費用特約をお持ちなら、費用を気にせずに弁護士に依頼できます。折角、特約の保険料を払っておいて、使うべき局面で使わないなんて選択は、あり得ないと思います。
弁護士費用特約は、被害者のための保障であり、被害者に大きなメリットをもたらします(なお、使っても等級は変わりません)。遠慮なく、必ず使ってください。