弁護士費用を相手から回収する方法

目次

相手から回収する理屈

法律・判例

示談でも裁判でも、弁護士費用は、自腹で払うものです。相手に非があっても、弁護士費用を相手に請求することはできません。これが原則です。
弁護士費用特約を使って賄う場合も、理屈上は、自己負担と同じことです。

もっとも、これには例外があります。
法律上で「不法行為」と呼ばれるジャンルの事案の場合、弁護士費用の一部を、相手に請求することが可能なのです。裁判例の相場では、元金(認められる賠償金)に対して、1割ほどが、弁護士費用分として上乗せされます。
この「不法行為」の典型が、交通事故被害者の損害賠償請求です。

また、ジャンルを問わず、利息(遅延損害金)も請求できます。
交通事故被害者の損害賠償請求の場合、事故発生日から年5%の金利がつくのです(現在の法定利息。なお法律改正が協議されてます)。

具体例

たとえば、1000万円の賠償金が認められる場合、1割100万円の弁護士費用が上乗せされ、計1100万円となります。
それに対して年5%の金利がつく。仮に事故から2年経過していれば、元利合計1210万円です。
つまり、この場合1000万円の賠償金に対して、210万円の「付録」がつくのです。

事件規模1000万円だと弁護士費用は15~20%くらいなので、この場合、弁護士費用は「付録」で賄えます。
弁護士費用は、着手金と報酬金の二段階払です。報酬金は賠償金(回収額)から算出するのに対し、着手金は「請求額」から算出します。ある2件の回収額が同じでも、請求額が違えば弁護士費用(着手金+報酬金)は異なります。このため、賠償金に対する弁護士費用の割合を計算すると、どうしても幅が出ます。

相手から回収する条件

ただし、上記のように相手から回収するためには、次の2つの条件を満たさなければなりません。

  1. 損害(元金)が、ある程度の大きさであることが必要です。
    損害がそこまで大きくない場合、「付録」で弁護士費用全額は賄えないまでも、相応に負担を減らせます。
  2. 裁判を提起することが必要です。

ネックとなるのはですね。

理屈上は、示談交渉でも「付録」をつけて請求することは可能です。でも実際には、「付録」に固執すると、示談交渉はまず決裂します。

裁判が前提となるので、弁護士としても、積極的にお勧めはしません。
でも、大規模被害で弁護士費用の負担が少なくないときは(弁護士費用特約があっても、限度額を超える場合は)、検討に値する方法だと思います。