被害を損害に換算する方法

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被害と損害

被害って、とげとげごわごわしたもので、そのままでは取引(示談)の対象にできません。
まずは、被害を、取り扱い可能な「損害」の形に変換する必要があります。

損害とは、被害を金銭に換算したものです。
被害の見え方(換算方法)にはいろいろあります。加害者の目線で「ひとまずの被害者救済」と見るのと、被害者の立場で「当然の正当な被害弁償」と見るのとでは、感覚(金額)が違って当然です。
つまり、同じ被害でも、見方(換算方法)次第で、「損害」額は大きく変わるのです。

換算方法としては、2つの系統があります。

  • ひとつは、自賠責基準
    保険会社が使う簡易な査定方式です。
    また、これを微調整した「任意基準」と呼ばれる手法も、同系統です。
  • もうひとつは、弁護士基準
    弁護士が使う厳密な査定方式です。
    その実体は裁判相場なので「裁判基準」とも呼ばれますが、中味は同じです。

自分で交渉する場合

あなたが自分で交渉する場合は、次のような展開となります。

  1. まず、保険会社が自賠責基準(ないし任意基準)で損害額(示談金)を査定し、あなたに提示します。
    それは「この金額で示談しましょう」という提案・言い値に過ぎません。でも、保険会社は、あたかも「これが正当」という雰囲気で、査定書を送ってきます。
    多くの被害者は、その安さに気付かず、あるいは目をつぶって、示談に応じます。
  2. あなたが「納得できない」と言っても、保険会社は交渉に応じないか、微調整でお茶を濁します。
    そして「これ以上と言うなら裁判。受けて立つ」とのスタンスを示します。しばらく睨み合いになっても、そのうち被害者が耐えられなくなり、折れて示談することになるでしょう。

弁護士を入れた場合

弁護士を入れたら、次のような展開に変わります。

  1. 弁護士から、弁護士基準で算出した損害額(示談金)を、保険会社に示します。
  2. 示談でどこまでの獲得を目指すか(いくらに達しなければ裁判を提起するか)は、弁護士から助言した上で、あなたに考えてもらいます。
    弁護士が、その線にしたがって保険会社と交渉し、示談か裁判かで解決を図ります。

まとめ

上記のように、「自分で交渉」と「弁護士を入れる」とでは展開が大きく異なります。要するに、

  • 保険会社の「自賠責基準」等は、簡易査定なので、あなたの手間は少なく済むし、金額もすぐ出てきます。でも、とにかく安い。
    もちろん、被害が小さく、スピード最優先という場合は、そのまま示談してもいいです。弁護士としては、後日に引きずらないよう、納得して幕を引くよう助言するだけです。
  • 弁護士の「弁護士基準」は、厳密な査定方法なので、資料収集などで一定の手間と時間はかかります。その分、金額は高くなります。
    本来、安易に妥協せず正当な賠償を受けるべきです。とりわけ後遺障害がある方は、今後の療養や生活立直しのためにも、資金の確保が重要です。

弁護士を入れることで示談金額は変わり、通常、大幅にアップします。手間と時間は要しますが、それに十分見合うだけの結果となります。
逆に、弁護士を入れる等の対策を講じない限り、大幅なアップは得られないというのが実務の常識です。

ちなみに、被害者の方にも大きな過失がある場合等は、弁護士を入れても自賠責基準と大きく変わらない場合があります。
詳細は割愛しますが、自賠責は「ほとんど過失相殺しない」という特徴があり、損害査定が安くても、過失相殺しないことでかえって有利になる場合(逆転現象)が生じるためです。