どんな症状が後遺障害?

後遺障害の等級(1級~14級)は、労災とほぼ同じです。
基本的に、「労働に影響する程度」で等級が分かれます。

目次

どういった後遺障害があるか

後遺障害の等級(1級~14級、1級が重い)は、労災の等級とほぼ同じです。「労働に影響する程度」を基に、等級が規定されています。

後遺障害は、「部位」と「程度」で分類されます。

  • 「部位」は、大きく「神経・精神」、「感覚器(眼・耳・鼻・口)」「腹臓器・生殖器」、「体幹」「上肢」「下肢」、「手指」「足指」に分かれます。また「露出面の傷痕(醜状)」も後遺障害です。
人体図
人体図
  • 「程度」は、各部位それぞれで、器質的な障害(欠損・変形・傷痕などの「形」のこと)と、機能的な障害(関節機能・運動機能などの「働き」のこと)に分かれ、それぞれの軽重に応じて、細かく等級が規定されています。

このページでは、「どういった後遺障害があるか」を、部位ごとに大まかに説明しています。とりあえず、大きくつかんでください。

ただ、一番の問題は、「自分の場合はどうなるか?」ってことですね。
そういう個別的・具体的な判断は、さすがに、弁護士に直に相談するのが速いし、正確です。

部位ごとの大まかな説明

「神経・精神」の障害

  • 中枢神経の損傷
    脳や脊髄の損傷による、高次脳機能障害(認知・記憶力の低減など)、広範囲の身体障害(四肢麻痺など)、精神障害(事故が契機のうつ病など)は、「労働に影響する程度」を基準に、重さが評価されます。「労働に影響する程度」との評価基準は、どうしてもブレが生じるので厄介です。
    脳の受傷後、傷は癒えても、知力や性格などに異常が残る場合があります。「高次脳機能障害」と呼ばれる後遺障害ですが、評価が難しく、検査・資料収集などの準備が大切です。早期に弁護士に相談してください。
  • 末梢神経の損傷
    末梢神経に由来する重大な症状は、他の部位(上肢、下肢など)の後遺障害に吸収されることが多いです。それ以外の、比較的軽度の「局部の神経症状」は、しつこいものが12級、軽傷が14級です(等級の定め方にはクセがあり、13級は飛び越します)。

【12級と14級】

  • 医学的に「証明」される神経症状が、12級
    レントゲン写真などから、「この状態なら神経症状が出るのが当然」と言える場合。骨折後の変形癒合のために痛みが残ったケースなどが典型。
  • 医学的に「説明」できる神経症状は、14級
    自覚症状ベースで認定され、治療経過や医師の評価を踏まえ、「症状の一貫性と常在性、回復の困難さ」が審査される。捻挫後の痛みやシビレが典型。自覚症状ベースのため認定にブレがある(非該当のときは異議を出すべき)。

「感覚器」「腹臓器・生殖器」の障害

検査・診察を受けて客観的所見を明らかにし、正しい認定を導きます。
要注意なのは、医師が、後遺障害認定について関心が薄かったり、詳しくないような場合です。検査・診断の前に、後遺障害認定に関する必要な知識を、医師にお届けした方がいいかもしれません。

「体幹」「上肢」「下肢」の障害

通常、整形外科の医師に、検査・診断してもらうことになるでしょう。整形外科は、他の科に比べれば、交通事故に慣れています。ただし、事務的かつ冷淡に診断する医師もいるので、油断はできません。

【計測に注意】

関節の動きの制限は、健康な状態より25%以上が損なわれて初めて後遺障害です。計測がいい加減だと、実際には25%超の制限があっても非該当です。その上、一旦「いい加減な計測」が記録されたら、その後に「正しい計測」がされても、「症状に一貫性がない」と評価されて非該当です。

「手指」「足指」の障害

後遺障害の等級表には、手指・足指に関する規定が多数あり、切断・機能不全となった指の種別や本数から、細かく等級が定められています(手指・足指の受傷は、交通事故では多くありませんが、労災事故では頻発します)。
手指の障害は労働に直結しますし、足指の障害も歩行や踏ん張りなどに影響することから、比較的重い等級に分類されます。

「表皮の露出面」の醜状障害

傷痕も、「露出面の大きなものは仕事に影響する」として、後遺障害とされます。
ただし、部位別に標準サイズが定められており、それに満たない場合は、自賠責は後遺障害と認定しません。
通常、自賠責調査事務所を訪問して、目視確認を受ける流れになります。

併合と既存障害の調整

ひとつの事故で、複数の箇所に後遺障害が生じた場合、まず部位毎に等級認定され、それらを総合して一個の等級が認定されます。「併合」と呼ばれる処理です。
併合にあたっては、自賠責のルールにのっとって、等級の繰り上げがあります(ただし、14級は繰り上げの対象外)。

既存の障害があった場合も、テクニカルですが、併合と同じ処理がされます。
まず既存障害について等級評価され、それを事故による後遺障害と併合して、一個の等級が認定されます。
その上で、自賠責保険金や損害賠償金では、既存障害の部分を差し引く調整がされます。