紛争と解決の現実

紛争なのに、そう気付いてないことがあります。
解決を願い、解決へと動いていない人がいます。

目次

契約について

1.他者との関係と、契約

キレイ事は「現実」を隠す

正当な解決が、自動的にもたらされるのが理想ですね。あなたが「被害者」や「非がない」方なら、なおさら そう思うはずです。
でも現実はシビア。「被害者なのに」「非がないのに」との思いは、交渉ではかえって邪魔となり、相手に利用されることさえあります。

このページでは、キレイ事(理想論)で誤魔化さずに、紛争・解決のリアルな現実を説明します。

建設的契約と清算的契約

当事者間での約束・取決めのことを「契約」といいます。
ルールの合意さえあれば、契約という意識がなくても、契約は成立します。契約は口頭で成立します。書面化するのは、証拠を残すためです。

説明のために、契約のことを2つに分けます。

  1. これから取引したり、一定の関係を作っていくために結ぶのが典型です。 この「はじめる」契約を、ここでは「建設的契約」と呼びます。
  2. 一方、既に起こった問題・関係を解消する意図で結ぶ場合もあります。 この「終わらせる」契約を、ここでは「清算的契約」と呼びます。

普通、契約って聞いたときにイメージするのは前者(建設的契約)です。
それだけに、示談(清算的契約)の当事者は、契約問題という意識が薄いことが多い。
あなたも そうかもしれない。 だから困惑します。

2.示談(清算的契約)の2つのパターン

契約上のトラブル ⇒ 示談

まず、契約(建設的契約)を結んでいる相手との、契約上のトラブルについて説明します。

本来、契約したら、その趣旨に従って双方が行動し、目的達成したら契約終了です。

建設的契約
建設的契約

でも ときに、一方が契約違反したり、契約を変えたい・やめたい・取消したいと言いはじめることがあります。「紛争」の発生です。

契約後のアクシデント
契約後のアクシデント

そんなときは、契約違反のペナルティーや、契約を変更・解除するかなどを話し合うことになります。

示談1
示談1

合意できたら、それに則って元の契約に戻るなり、元の契約を変更・清算するなりすればいい。このような合意も、一種の示談です。

事故などの問題 ⇒ 示談

では、契約関係にない相手との、事故や事件の場合はどうでしょうか。

事故や事件は、それ自体が「紛争」です。

契約外のアクシデント
契約外のアクシデント

突然、正反対の立場の相手との関係がスタートします。時期や相手を選ぶことは できません。
被害・負担が「今まさに」発生しているあなたと、「最終的な」弁償の総額を心配する相手とは、時間やプロセスのとらえ方も異なります。

示談2
示談2

それでも、話さないわけにはいかないのです。それも、ケガしたなら治療と並行して、相手が不誠実ならストレスを抱えつつ、被害甚大なら不安と闘いながら・・・
理不尽に感じられるでしょう。でも、この「現実」から目をそらすと、状況はさらに悪化します。

紛争について

要するに、示談(清算的契約)の必要な局面が「紛争」です。
なお、弁護士は「紛争」のことを「事件」と呼びます。

紛争
紛争

表面的に揉めてなくても、解決の話し合いが必要であれば「紛争」です。
望むと望まざると、「紛争」の渦中に立ってしまったら、契約交渉だと意識し、心構えしておくことが大切です。
メリットとデメリットの理解をベースに、冷静に交渉しなければ、良い解決は得られません。

ちなみに、

  • 紛争の激しさは、金額と無関係ではないけど、金額に比例するものでもありません。
    あなたに非がなくても、相手が不誠実なら激しい「紛争」となります。逆に、あなたに非があっても、相手が冷静なら「紛争」は治まります。
  • あなたが権利を持つ立場でも、法にかなわない要求を続けたら「紛争」を招きます。そのためにデメリットを受けることもあります。

解決って何?

1.解決の形

紛争を終わらせることを「解決」と定義しましょう。そのカタチは、大きく3つです。

  1. 示談による解決
  2. 裁判による解決
  3. 時間が解決 (示談も裁判もしない)

いざ紛争になったら、まずはに向けた交渉です。あなたの考える解決と、相手の考える解決がおおむね一致すれば、納得できる内容で示談できます。
でも、かけ離れていたら まとまりません。そのときは、に向けて譲歩するか、に切替えるか、もしくはとするかです。

上の3つの解決を、あなたの視点から再説明します。

  1. まずは示談交渉する
    • 最初は、自分で交渉してもいい
    • 無理なら、弁護士にバトンタッチ
  2. 話がつかないなら、「裁判による解決」が必要な状況ってこと
  3. それで裁判しないのは、「時間が解決」を選択するってこと

2.心の持ちよう

あなたの怒りや悲しみを、弁護士は静かに共有します。紛争局面では、現実を踏まえた判断が必要であり、冷静さが大切です。
あなたに留意していただきたいことを、あえて指摘しておきます。

リスクは予防するもの

本来、「紛争」の多くの部分は予防・対策が可能です。

  • 契約上の紛争は、契約時に適切な内容で契約することで、かなり予防できます。
    事業者の場合、そのために顧問弁護士が有効です。
  • 事故等も、十分な保険に加入することで備えられます。

たとえて言うと、「紛争」って火事のようなものです。
火の用心が何より大切だし、火が出ても手際よく消火すればボヤで終わります。火災保険からの補填もあるでしょう。

準備がなかった場合は、最終的に鎮火できても、一定の損害は避けられません。
それは、いわばサンクコスト(埋没費用)であり、「たら・れば」にこだわると損害が拡大します。
紛争では、「損を取り戻す」より、「損を減らす」という発想が合理的です。

たとえば債権回収では、請求の手間暇がすでに損で、満額回収できないリスクもある。でも、何もしないと丸損です。

相手を対等に見る

あなたに正義があり、相手に非がある場合でも、そのことは交渉「カード」のひとつに過ぎない。相手は、示談(清算的契約)の交渉相手として対等であり、ただ、立場とカードが違うだけです。

相手が、あなたの要求を無批判で受け入れたら、よほどラッキーです。
相手は、たとえ非があっても、示談するかどうかは自由。「支払を抑える」交渉を仕掛けるのも普通のことです。これが現実であり、交渉の出発点と思ってください。

相手は、たとえ「裁判になったら敗ける」と自覚していても、あなたの「裁判は嫌」との心情に乗じて、減額交渉を仕掛けてくることがあります。

弁護士を信頼する

弁護士は、完全にあなたの「味方」です。

弁護士は、相談や打合せのときに、

  • あなたの主張の穴を指摘することがあります。 穴を埋めていくためです。
  • 相手の主張をあなたにぶつけることもあります。 反論を考えるためです。
  • あなたに譲歩を勧めるときもあります。 それが客観的に有利な場合です。

もちろん、あなたも思ったことは言ってください。
でも、弁護士が「味方」であることは、決して疑わないでください。

示談での解決

典型的な示談について、交通事故被害者が保険会社と示談するケースをもとに、具体的に説明しましょう。

この場合の示談は、交通事故被害者にとって、「 権利」(損害賠償請求権)を「 示談金」と 引き換える取引です。
ただ、取引で「 天秤」に載ってくる要素は、金額だけではありません。

  • 譲歩して示談で決着する場合
    解決までの「 手間」と「 時間」が少ない。
    また、解決するのに「 コスト」はかからず、結果がどうなるかの「 リスク」も避けられる。

取引
取引

  • 譲歩せずに裁判へ進む場合
    解決には「 手間」と「 時間」がかかる。
    また、解決には相応の「 コスト」がかかり、結果がどうなるかという「 リスク」も伴う。

この構造は 保険会社も同じですが、先方は大企業であり、粛々と事務的に処理するだけ。手間・時間・コストは、無視はできないけど、割り切りも可能。積極的にリスクをとるケースもある。

双方の状況・環境の違いが、交渉上の力関係につながります。

安易な譲歩はお勧めしません。後々、後悔することになるからです。
とは言え、紛争の局面で、「 手間」、「 時間」、「 コスト」、「 リスク」などを一切負担せずに、満額の「 示談金」を獲得したいというのは、いささか無理があります。弁護士費用の出る保険(特約)を持っていれば、コストを考えないでよくなります。

現実的には、各要素の優先順位や程度をバランスしつつ、「示談のためにどこまで譲歩するか」「どのラインで交渉を打切るか(打切られるか)」を冷静に考えながら、交渉していくことが必要です。

裁判での解決

示談できない場合は「裁判による解決」です。
裁判では、「和解」か「判決」のいずれかで決着します。裁判所の手続には「調停」もありますが、そこでの解決は「和解」に類似します。

和解は、いわば「裁判手続の中での示談」です。
裁判官が公平な第三者として取り持つこと、「和解しないときは判決」というプレッシャーがかかることから、裁判前の交渉よりまとまりやすいです。
また、「 手間」、「 時間」、「 コスト」、「 リスク」などの面でも、判決より、和解で決着するのが望ましい場合が多いです。
実務上、裁判の多くが和解で決着しています。

どうしても和解できない場合は、裁判所が判決を下します。
判決は「国家権力による命令」です。当事者の意思にかかわらず、命令によって強制的に決着します。
ただし判決も万能ではありません。弁護士との方針協議の中で、詳しい説明を受けてください。