交通事故で歪む医療 ~ 12.被害者の懊悩(1)


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皆様,GWは楽しまれたでしょうか。 私は,別府でひとっ風呂でした。
直前に予約を入れたのですが,簡単に取れました。 もしかしたら震災の影響かもしれません。 それだけダメージを受けている人たちが多いのか,あるいは自粛なのか。
いずれにせよ,このままでは,日本経済は本格的に危ういです。

さて,
自由診療とかけて,GW中の温泉と解きます。
そのこころは,「高くても,客が来ます
…お粗末。。

これまでの連載で,交通事故被害者にとって,保険診療か自由診療かは,負担に直結する問題だということを,説明してきました。
そして,患者が,保険診療を選択するというのは,実際上,かなり難しいこと,現にほとんどが自由診療となっていることも,説明してきました。

自由診療にするか,保険診療にするかは,理屈上は,病院と被害者(患者)との診療契約の問題です。
そして,ほとんどの場合に自由診療が選択される理由は,
・システム構造上の要因
・病院の都合
・患者の問題
が ないまぜになって,自由診療が選択されやすい状況が作られているからだと言えます。

システム構造上の要因としては,事故(=第三者行為)での健康保険使用が例外扱いされていること,及び,自賠責がサクサク治療費を支払ってしまうこと,といった問題を,既に説明しました。

病院の都合とは,端的に,自由診療の方が儲かる,ということです。 このことも,既に説明しました。

最後が,被害者(患者)の問題です。
この点,被害者が,真実を知らず,気づきにくいために,流れのまま自由診療を選択しやすいことは,既に説明したところです。

ただ,被害者が自由診療に流されやすい事情は,この他にもあります
それは,被害者感情と結びついており,とてもデリケートです。

これまでの記事は,一気に書き上げ,分割して,予定投稿にてアップしてきました。
ほとんど調べることもなく,手持ちの知識・ノウハウだけで書ける内容だったからです。

こっからが,本番です。

日ごろ,たくさんの事故被害者の相談に乗り,弁護活動をしている中で,ぼんやり感じ,ほんのり考えていることがあります。
まだ,きちんと頭が整理できていませんが,書きながら,考えをまとめていきたいと思っています。

考え,考え,書いていきます。

(続く)

5月 8th, 2011 | Leave a Comment

交通事故で歪む医療 ~ 11.これまでのまとめ


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簡単に書くつもりが,詳細な内容にわたってしまいました。
議論が とっ散らかった感がありますので,ここらで,一旦,まとめておきます。
※まとめなので,内容は繰り返しです。

被害者は,「賠償」(被害弁償)を受ける権利がある。
しかし,実際は,最低限の「保障」(救済)を受けているだけ。
最低限の「保障」とは,(1)自賠責の低い算定基準で認定された,(2)自賠責の限度枠内の保険金のこと。

(1) つまり,被害者は,任意保険(加害者の保険会社)が窓口となって,自賠責の保険金(広く薄い保障)を受け取っているだけ(任意保険のダブルスタンダード問題)。

(2) その上,治療費が,自賠責の枠(傷害の場合で120万円)を,大幅に浸食している。
治療費については,交通事故=自由診療という業界常識・慣行のため,被害者は,健康保険を使った場合の6.7倍もの負担を強いられている(福岡での相場)。
それは,見えないだけで,被害者の現実の負担である(本連載メインテーマの自由診療問題)。

以上が,シンプルな説明であるが,
実際には,複雑な仕組みのため,被害者としては,十分な「賠償」を受けていないことや,高額の治療費を負担させられていることに,普通,気づかない(ようにされている)。

自由診療で利益を得る医療界はもちろん,保険金支払額を抑えたい任意保険や,支出を抑えたい健康保険などが,利害一致して,真実にうっすらとベールを かぶせているもの…。

利害関係のある者は,自分に不利な発言はしません。
とすれば,発言できる立場にあるのは,被害者のために活動している弁護士(保険会社や病院と利害関係のない弁護士)だけです。

もっとも,事故被害者のために活動する弁護士でも,ダブルスタンダード問題には突っ込んでも,自由診療問題にまで言及する者はまず見掛けません。

その要因は2つ。
1つは,詳しくない,ということ。 実際,これまでの連載の内容を,ちゃんと理解している弁護士は少数だと思います。
なぜなら,弁護士は普通,治療が終わった後の賠償問題だけを取扱うものだからです。
※私のアトラス法律事務所では,治療中の方からの相談・依頼も積極的に受任しています。 確かに手間がかかりますが,本当に弁護士のサポートが必要なのは,治療中の時期だと思うからです。 しかし,このような取り組みをしている弁護士は,珍しいです。

もう1つの要因は,デリケートです。
実は,自由診療がはびこる温床として,被害者自身に,真実に目を向けようとしない事情・傾向があることが,影響しているからです。

たとえば,被害者の相談を受けた際,自由診療の問題を説明すると,怒り出す人が少なくありません。 概して,弁護士の真意は,真っ直ぐには伝わりにくいようです。
弁護士としても,被害者に適当に話を合わせて,できる範囲で事件処理をやっていく方が楽です。 だから,たとえ知っていても,あえて触れないのかもしれません。

この,被害者の事情・傾向について,今後の連載で書いていこうと思ってます。

5月 3rd, 2011 | Leave a Comment

交通事故で歪む医療 ~ 10.自賠責のもたらす錯綜(5)小括


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ここ数回の記事で,任意保険による,自賠責レベルでの示談提示の問題性を指摘しました。
この,任意保険が損害査定基準を使い分けるダブルスタンダード問題は,交通事故被害者にとって,一番,重要な問題です。
※記事の副題は「自賠責のもたらす錯綜」ですが,任意保険が自賠責基準を濫用していることも,自賠責のもたらす重大な影響の1つです。

ここ数回の記事では,主に,後遺障害の非該当・14級のケースを想定して説明しました。
ただ,そこまであからさまではないものの,死亡事故や重篤な後遺症のケースでも,任意保険は,基本的に,同様のやり方をしてきます。

ダブルスタンダード問題には,多数の複雑な論点が含まれており,これだけで本が1冊書けるくらいです。 詳細になり過ぎるので記述しませんでしたが,たとえば,被害者保護を謳う人身傷害特約が,かえって任意保険の自賠責基準の実務を下支えしていることとかも,とても重要な問題です。
もっとも,
本連載では,この問題について,これ以上の言及はしません。
この問題については,たくさんの弁護士が,任意保険のやり方の不当性を指摘し,かつ,被害者救済のために活動していますので,当面,それらに委ねたいと思います(いつか,別に書くかもしれませんが)。

いずれ,弁護士のサポートを受けずに,被害者だけで,百戦錬磨の任意保険と交渉しようとしても,無理があります。
被害者の方は,示談の前に,是非一度,弁護士に相談に行ってください
※私のアトラス法律事務所では,事故被害者のために無料相談を実施しています(電話相談は,やっていません)。
 他にも,法テラスや弁護士会の法律相談センターなどで,弁護士の法律相談を受けられます。

さて,
本連載では,交通事故被害者の負担となっている,自由診療の問題について,取り上げています。
この問題は,ダブルスタンダード問題と異なり,弁護士の中でも,一部の者しか関心を持っていません。 交通事故被害者のための活動を専門的に行っている弁護士でないと,詳しいところは知らないのです。
だから,私がここで,発言する意味があると思っております。

自由診療については,理屈として,事故の治療費を,健康保険と自賠責のいずれが負担するのが正当であるのか,といった財源問題が議論されることもあります。
しかし,そんな大上段の議論をすると,かえって,問題の本質を見誤らせます。
シンプルに考えることが大切です。

ごくごく素直な見方として,事故被害者の立場に立ったら,事故の方が,病気より患者負担が大きいのは,理不尽ではないでしょうか。

たとえば,
・病気で健康保険を使うと,負担は30%です。
・自由診療だと,過失割合15%で,病気と同じ負担額になります。
 (自由診療では治療費が2倍,100万円の30%は,200万円の15%に相当)
 それ以上の過失割合だと,より大きな負担となります。

これって,おかしくないですか?
※なお,治療費が2倍というのは,福岡における相場です。 自由診療については,医師会と,自賠責・損保協会との協議に基づき,約1.5倍にするやり方も呼び掛けられています(「日医基準」とか「新基準」と呼ばれます。それでも高いです)。 しかしながら,これには拘束力がなく,採否は,各病院の良心に委ねられています。 他の地域の状況については詳しくありませんが,福岡では,ほとんど,採用されていないようです。

そして,
ごくごく素朴な疑問として,事故受傷について,広く一般に(とりわけ後遺障害非該当・14級相当の症例で),自由診療を選択・継続しなければならない医学的必要性があるのか? というのも,不思議です。

この疑問ですが,実は,自由診療が廃れない要因の1である,被害者(患者)の側の事情に,関わってきます。
次回からは,この問題について,書いていく予定です。

(続く)

5月 2nd, 2011 | Leave a Comment