原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない?
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【Posted in » 一般民事・行政】
朝日新聞(2011/11/24)で報道されていましたが,概要,
・福島県二本松市のゴルフ場が,東電に対して除染を求める仮処分を申し立てたところ,東電側は,放射性物質は東電の所有物ではないから除染に責任をもたないと答弁した。 放射能は誰のものかが争われた。
・東京地裁は,10/31付の決定で,ゴルフ場の訴えを退けた。
という内容です。
この報道に対しては,ネット上,(1)東電の対応が無責任,(2)裁判所の判断がおかしい,といった2方向の議論があるようです。
多少,誤解があるように思いますので,簡単に,解説しておきます。
1 仮処分手続の限界
このケースは,裁判(訴訟)ではなく,仮処分という手続が取られたようです。
仮処分とは,「裁判で決着するまで待てないので,暫定的に,一定の行為をさせておく」という手続です。
ゴルフ場の主張の当否という以前に,仮の処分として,今すぐ急いで,そこまで東電に命じる必要があるのかどうか,というハードルがあります。
東京地裁が,いかなる理由でゴルフ場の訴えを退けたのかは報道されていませんが,「仮の処分ではなく,正式な裁判手続でやってください」という判断もあったのではないか,と想像します。
2 東電主張の合理性
法律・裁判の仕組み上,このようなケースでは,金銭解決を求めるのが通常です。 一定の作業を命令するのは例外的であり,その分,要件が厳しい。
つまり,ゴルフ場としては,「除染した(する)から賠償金を払え」との請求が原則であり,「除染しろ」との請求は例外的なのです。
「賠償金」は「放射能を撒き散らした者の義務(不法行為者の法的責任)」の問題であり,他方,「除染」は「放射能の持主の義務(所有権者の法的責任)」の問題です。
東電として,不法行為責任を問われた場合は,反論するのはシビアでしょうし,裁判所としても厳しく見ると思います。
しかし,所有者責任を問われたら,東電が「自分は所有者ではない」と答弁するのは,不合理ではありません。
なぜなら,所有権とは『物』に対する権利です。 民法85条で「この法律において『物』とは、有体物をいう」とされており,空気中に拡散された微量の放射性物質を『物』(=有体物)だと言うのは,法律解釈上,無理があります。
つまり,東電が「自分は所有者ではない」と言うのは,「放射性物質は『物』ではないから,およそ所有権の対象になり得ない」という意味で,何らおかしくないのです。
結局,ゴルフ場が,東電に対し,「お宅が所有者なんだから,持って行って」と求めるのは,法律・裁判の仕組み上,難しい訳です。
ただそれは,東電の責任(賠償責任)がないという意味では,ありません。
新聞にしろ何にしろ,一定の事象を要約する以上,必ず,要約者の能力ないし主観が介在します。
この件の報道は,記者の能力不足か,意図によるものかはともかく,いずれにしても,読者に一定の印象を与え,世論を一定方向に誘導する効果が込められています。
マスメディアというのは,そういうものです。
